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2022.04.22

商標の類否はどう判断するの?

商標を登録すると、登録された商標そのものだけでなく、それに類似する商標まで保護を受けることができます(詳細はこちらのコラムにおける「商標権の効力が及ぶ範囲」をご参照ください)。

そうなると、こんな疑問が湧いてきます。

商標が類似しているか否かってどう判断するの?

実は、商標の類否に関して100%誰でも同じ結論に達するような明確な線引きはありません。判断する人や時代によって異なる結論になったり、商標の使い方や知名度、さらには社会に与える影響など、様々な個別事情を考慮して結論が変化することもあります。

ただ、 商標の類否を判断する「基本的な考え方」を知っておくことは大事ですので、それを説明します。

基本的な考え方

商品を買い間違えるほど紛らわしいか?

最高裁判所は、「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきである」と判示しました。 要するに、商品を買い間違えてしまうほど紛らわしい商標かどうか、がポイントとなります。

最高裁判所がこの考え方を示したのは昭和43年とかなり昔なのですが、現在においても、特許庁の審査や裁判所の審理における商標の類否は、全てこの考え方に基づいて判断されています。

外観・称呼・観念の3つの要素を対比する

商品を買い間違えてしまうほど紛らわしい商標かどうかは、以下の3つの要素を対比して判断します。

  • 外観(見た目)
  • 称呼(読み方)
  • 観念(意味合い)

このうち1つでも類似しているものがあれば「紛らわしい」(類似)と判断される可能性があります。

実務上は、この中でも称呼のウエイトが大きいと言えます。実際に、両商標の称呼が同一であると「類似」と判断される可能性が高く、称呼が2音以上異なると「非類似」と判断される可能性が高いです。1音違いの場合は、全体の音節数や異なる音の位置、母音・子音の共通性などにより、「類似」/「非類似」の判断が変わります。

商標全体で対比する(原則)

上記3つの要素は、原則として商標の全体で対比します。

ただし、商標の一部を抜き出して対比する場合もある点には、十分に注意が必要です。例えば、図形と文字の結合商標の場合は、文字だけ(図形だけ)を抜き出して対比しますし、商標中に商品・サービスの普通名称や品質を表す部分がある場合は、その部分を削除して残りの部分を対比します。

商標の類否判断は専門家でも難しい

商標の類否判断は、正直、専門家である弁理士でも難しいです。先行する登録商標と非類似だと思って商標登録の申請をしたら、審査官から「登録商標と類似だから登録を認めない」と指摘されることもありますし、その逆で、先行する登録商標と類似だと思っていたもののお客さまの強いご要望によりダメ元で商標登録の申請をしたら、すんなり登録が認められたなんてこともあります。

したがって、安易に類似・非類似を一義的に決めつけるのではなく、常に逆の判断になる可能性もあることを認識して、必要な対応をしていくことが重要です。