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実務・運用
2022.04.07

知的財産に関する調査

弁理士(特許事務所)は、知的財産に関する調査の依頼を請け負うことがあります。

知的財産に関する調査には、大きく分けて4種類あります。それぞれ調査の目的が異なりますので、当然に調査範囲も異なりますし、調査にかかる時間や費用も異なります。以下、その4種類を簡単に紹介いたします。

なお、以下では特許調査を中心に説明していますが、意匠でも商標でも基本的な考え方は一緒です。

先行技術調査(出願前調査)

ある技術的アイデアについて特許出願する前に、既に同じ又は近い技術が存在するかを確認するための調査です。既に同じ技術が存在する場合は特許出願しても確実に特許になりませんし、近い技術が存在する場合も特許になりにくいと言えますので、特許を取得できるか否か(特許出願すべきか否か)の判断指標となります。技術的アイデアをブラッシュアップする場合の方向性のヒントにもなり得ます。

この調査では、一般に、公開特許公報(場合により特許公報)を調査します。当然に漏れは生じますが、そもそも特許を取得できるか否かを確実に判断することは不可能ですので、どちらかというとスピード重視(かつ低費用)になります。

なお、ひので総合特許事務所では、特許出願をご依頼頂いた場合には、その費用の中で簡易的な先行技術調査を行いますので、別途ご請求することはありません。

侵害予防調査(クリアランス調査)

自社製品を製造・販売するにあたり、第三者の特許権と抵触していないかを確認するための調査です。第三者の特許権と抵触している製品を製造・販売してしまうと、差止請求や損害賠償請求を受けて大きな損害を被る可能性がありますので、事前にチェックすることが重要です。また、抵触する特許権が見つかった場合には、特許を無効にする手続きをしたり、特許権者とライセンス交渉をしたり、抵触しないように製品を設計変更するといった対応を採ることができます。

この調査では、一般に、特許公報及び公開特許公報(存続しているもの)を調査します。1件の特許権が命取りになる可能性もありますので、できるだけ漏れのないよう手広く検索をした後に1件1件手作業で抽出します。したがって、時間と費用がかかります

怪しい特許権が見つかったときには、さらに詳細に検討する「鑑定」という作業が必要になる場合もあります(別途費用が発生します)。

無効資料調査

第三者の特許を無効にする証拠を探し出すための調査です。例えば、上記の侵害予防調査により自社製品に抵触する第三者の特許権が見つかった場合でも、その特許が無効であれば、安心して製品を製造・販売することができます。また、自社の特許権の行使する際に、その特許が無効でないことを確認するために調査する場合もあります。

この調査では、一般に、特許文献(公開特許公報・特許公報)非特許文献(学術論文など)を調査します。ただし、その特許を取得する手続き中の審査において審査官が少なくとも特許文献を調査しているはずですので、そこから無効資料が見つかる可能性はそれほど高くありません。結局、膨大に存在する非特許文献を調査せざるを得ないことも多く、その調査範囲により時間と費用が大きく変わります

技術動向調査

特定の技術分野や企業の動向を俯瞰的に分析するための調査です。具体的には、その特定の技術分野や企業の特許出願や特許権をマップ化(いわゆるパテントマップ)することで、時系列的に技術や製品仕様の動向を分析し、また予測することができます。例えば、新規事業に参入するにあたって、他社と差別化できる技術開発の方向性を定めたり、今後の進展が予想される技術テーマを選定することができます。

この調査では、一般に、特許文献(公開特許公報・特許公報)を調査します。1件1件の具体的な内容よりも全体的な動向を掴むため、最初に調査の目的(調査で何を知りたいか)を定め、1つの仮説を立て、それを検証するという作業になります。したがって、調査前の検討に時間がかかることになります。