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2022.08.19

部分意匠制度と関連意匠制度

物品のデザインを意匠登録すると、意匠権が付与され、同じようなデザインの模倣品を排除することができます。しかし、物品のデザインは本質的に「点」であって、少しデザインを変更すれば別のデザインと評価されることも多いことから、意匠権で保護されるデザインの範囲はどうしても狭くなりがちです。

そこで、意匠法には、意匠権によるデザインの効果的な保護を実現すべく、

  • 部分意匠制度
  • 関連意匠制度

という特有の制度があります。これらの制度を上手に活用することで、意匠権で保護できるデザインの範囲を拡張したり、複数のデザインが纏まった「領域」として保護できるようになります。

本コラムでは、これらの制度を簡単に紹介いたします。

部分意匠制度

部分意匠制度は、物品の「部分」における特徴的なデザインを保護できる制度です。

通常の意匠権では、物品「全体」が同じようなデザインのみが保護されるのですが、部分意匠の意匠権であれば、 特徴的な「部分」を取り入れつつ全体としては大きく異なるデザインまで保護されます。すなわち、部分意匠制度を活用することで、意匠権で保護できるデザインの範囲を拡張できるのです。

以下は、いずれも「乗用自動車」の意匠登録例ですが、自動車全体の意匠のみならず、部分意匠制度を活用して、フロントグリル部分、ヘッドランプ部分、リアランプ部分の意匠も登録されており、当該部分のみが似た模倣品をも排除しています。

現在、特許庁に登録されている意匠の約40%前後が、部分意匠となっています。

関連意匠制度

関連意匠制度は、一つのデザインコンセプトから創作されるバリエーションのデザインを保護できる制度です。

通常の意匠権は、一つのデザイン(点)に対して付与されますが、関連意匠の意匠権は、一つのデザインコンセプトに基づく複数の似たデザインに対してそれぞれ付与されます。すなわち、関連意匠制度を活用することで、複数のデザインが纏まった「領域」として保護できるのです。

以下は、いずれも「レンジフード」の意匠登録例ですが、関連意匠制度を活用して、ライトの数・位置やハンガーの有無が異なるバリエーションの意匠が登録されており、これらが纏まった「領域」として保護を受けています。

現在、特許庁に登録されている意匠の約20%前後が、関連意匠となっています。

部分意匠と関連意匠の組み合わせ

上記のように、部分意匠制度や関連意匠制度を活用することで、意匠権によるデザインの効果的な保護が図れる訳ですが、それでは部分意匠と関連意匠を組み合わせたらどうなるでしょうか?

はい、ご想像のとおり両制度の効果が組み合わされて、「領域」として保護される範囲が拡張されますので、より効果的な保護が図れます。

以下は、いずれも「包装用容器」の意匠登録例ですが、部分意匠制度及び関連意匠制度を活用して、容器部分の太さ及びその前方中段に形成された2つの凹みの形状が異なるバリエーションの意匠が登録されており、容器部分以外(例えば容器上部の注ぎ口部分やキャップ部分)の形状は問わない訳ですから、拡張された「領域」として広範な保護を受けることができています。

現在、特許庁に登録されている意匠の約10%前後が、部分意匠と関連意匠の組み合わせとなっています。