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2022.03.24

他人の登録商標は一切使えないの?

弁理士の仕事をしていると、こんな質問をされることがよくあります。

自社のサービスに使う新しい名称を思いついたのですが、インターネットで調べたところ、別の会社が同じ名称を既に使っていて、そこにはⓇマークが付いていたので、当社はこの名称を使うことはできないのですよね?
※注:Ⓡは「登録商標」の意味

ここでは、その名称が登録商標であることは事実であったとして、この質問に対する回答をしますと、「いいえ、他人の登録商標であっても使える場合があります。」となります。もちろん、許可とかを得る必要もありません。

この点は、登録商標について世間一般で最も誤解されている部分だと感じています。実は、他人の登録商標であっても一切使えない訳ではなく、あくまでも設定登録された商標権の効力が及ぶ範囲において他人は使えないだけであって、その範囲外については誰でも自由に使えるのです。

では、商標権の効力が及ぶ範囲はどこまでなのか、以下、簡単に説明いたします。

登録商標と必ずセットで登録される事項

商標権の効力が及ぶ範囲の前に、1つ確実に理解しておいて頂きたい事があります。

商標は、商品・サービスと必ずセットで登録されている

そもそも、商標は、誰の商品・サービスであるかを表示する標識ですので、考えてみれば当然のことでしょう。ただ、上記の質問でもそうですが、登録商標の話をしているにも関わらず、 商標とセットで登録されているはずの商品・サービスのことがスッカリ抜け落ちることが多いのです。この質問では、情報が足りないのです。

換言しますと、商標とセットで登録されている商品・サービスが何かを確認せずに、その商標権の効力が及ぶ範囲を議論することはできません。なお、商標の登録内容は、例えば、特許情報プラットホーム(J-PlatPat)を利用して登録商標を検索することで、確認することができます。

商標権の効力が及ぶ範囲

商標権の効力が及ぶ範囲は、以下の2つの条件を両方とも満たす範囲です。

  • 商標が同一又は類似の範囲
  • 商品・サービスが同一又は類似の範囲

具体的には、図において色が付いている領域が、商標権の効力が及ぶ範囲となります。すなわち、色が付いている領域に入る組み合わせでは他人は使うことができません

なお、専門的には、商標及び商品・サービスがいずれも同一の領域を専用権、一方又は両方が類似の領域を禁止権と呼び、これらの権利の効力には若干の違いがあるのですが、いずれも他人は使うことができないことに変わりはありません。

一方、色が付いてない領域までは、商標権の効力は及びません。例えば、「同一の商標」✕「非類似の商品・サービス」の領域(図のマトリックスにおける右上の領域)には商標権の効力は及びませんので、 商標とセットで登録されている商品・サービスと非類似の商品・サービスであれば登録商標を使っても問題ないのです。