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2022.02.10

新規性を失ったアイデアの救済措置

アイデア商品を展示会やホームページで紹介したら反応が良かったり、実際に販売したら売れ行きが良いことが分かると、そのアイデアの「特許を取得したい」と考えると思います。

しかし、アイデア商品を展示会やホームページで紹介したり実際に販売したりして、ひとたび不特定の者がそのアイデアを理解できる状態においてしまうと、そのアイデアは客観的に新しいものとは言えず、特許を取得する1つの要件である「新規性」を失っています。そう考えますと、残念ながら、そのアイデアについては、もはや特許を取得することができないことになります。

※「新規性」の詳細については、こちらのコラムをご参照ください。

では、このようなケースでは、もう全く打つ手はないのでしょうか?

救済措置(新規性喪失の例外)

実は、このようなケースに対する救済措置があります。所定の条件を満たせば「新規性」を失った行為(販売や展示など)をなかったことにすることができ、特許を取得できる可能性があるのです。この救済措置は、新規性を喪失したアイデアを保護するための例外規定ということで、法律的には「新規性喪失の例外」と言います。

具体的には、以下の3つの条件を満たせば、救済措置を受けることができます。

  • 自らの行為に起因して新規性を失っていること
  • 新規性を失った日から1年以内であること
  • 救済措置を受けるための手続きをすること

ざっくり1年以内であれば救済される可能性があると理解して頂ければ十分です。実際には細かい規定があるのですが、それについては救済措置を受けようとする場合に、特許事務所(弁理士)に相談して頂ければ良いと思います。

ただし、これは、

あくまで例外的かつ限定的な救済措置であって万能ではない!

ことを認識しなければいけません。

この救済措置を受けるための手続きは、特許出願時にしなければいけませんので、その手続きをしないまま特許出願してしまうと、後から救済措置を受けることはできません。また、他人が同じアイデアを公開してしまったり先に特許出願してしまった場合は、この救済措置でも救済されません。外国には、このような救済措置の規定が存在しない国もあります。

したがって、「救済措置があるから大丈夫」ではなく、 アイデア商品を展示会やホームページで紹介したり実際に販売する「前に」特許出願することが重要です。

特許以外の場合は?

特許と同様に「新規性」が1つの登録要件になっている実用新案や意匠においても、 新規性喪失の例外の救済措置を受けることができます。なお、実用新案については、特許庁で実体審査はせず「新規性」の有無を判断しませんので、この救済措置を受けなくても形式的には登録されますが、後で「新規性」を失っていることが判明すればその実用新案は無効になりますので、ちゃんと救済措置を受けておくことをお勧めいたします。

商標については「新規性」は登録要件ではありませんので、既に使用していて「新規性」のない商標でも、他の要件を満たせば登録されます。したがいまして、商標では、そもそも救済措置を受ける必要がありません。