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法律・制度
2021.12.03

建築物の意匠

令和元年に意匠法が改正されて、建築物が意匠として登録を受けることができることになりました。

え?以前はだめだったの?って思われるかもしれませんが、実は、改正前は、建築物等の土地に固定されているものは、意匠として認められておらず、意匠法では保護を受けることができませんでした。

法改正の前は

建築物は、従来より著作権法や不正競争防止法でも保護されております。

著作権法

著作権法の場合、著作物に該当する必要があり、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と著作権法第2条第1項第1号で定義されています。

著作権による保護を受けるためには、この著作物に該当する必要があり、美術性的なものが必要となりますので、結構敷居は高いです。

不正競争防止法

不正競争の場合、建築物の外観や内装が、不正競争防止法で定義されている「商品等表示」に該当している必要があります。

ただし、詳細は省きますが、不正競争防止法で保護を受けるためには、その商品等表示に該当する外観などが周知性や著名性の要件を満たしている必要があります。周知・著名性が認められたコメダ珈琲店の判例もありますが、全国的な周知性が必要となりますので、結構厳しいものがあります。

意匠法

意匠法の場合は、著作権法や不正競争防止法とは異なり、登録されるためには特許庁の審査を受ける必要があります。

審査では、その建築物の意匠が、新しいものであるか、他から容易に創作できないものであるかが審査されます。この審査に通れば、意匠登録され、意匠権が発生します。
ですので、新しくて独創的な建築物を設計した場合は、意匠登録出願をして意匠権を取得することをお勧めします。
ちなみに、意匠権の存続期間は、意匠登録出願の日から25年となっています。

建築物の意匠の登録例

意匠として意匠登録されている建築物を紹介します。以下の2つは、国内で初めて意匠登録された建築物です。

ユニクロPARK

ユニクロPARKは、横浜ベイサイドにある株式会社ファーストリテイリングの商業施設ですが、意匠登録第1671773号「商業用建築物」として意匠登録されております。

上野駅公園口駅舎

上野駅公園口駅舎は、その名の通り、上野駅の公園口側の駅舎で、東日本旅客鉄道株式会社が出願をし、意匠登録第1671774号「駅舎」として意匠登録されています。


意匠は重要

以上説明しましたように、建築物は、著作権法や不正競争防止法でも保護することは可能ですが、その保護を受けるためには著作物性や周知・著名性等が必要で、とてもハードルが高いです。

そのハードルの高さを考えますと、建築物のデザインを保護するために、意匠登録を目指すことが重要になってくるのではないでしょうか?