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2021.10.08

特許と意匠は何が違うの?

新しい製品を開発した時、特許で出すべきか、意匠で出すべきか、悩まれたことはありませんか?

あなたの製品を的確に保護するには、どちらの権利の取得を目指すのが良いでしょうか?

そこで、このコラムでは、特許と意匠で、何が違うのかを説明したいと思います。

保護対象の違い

特許は、機能や構造などの技術的な発明(技術的思想)を保護する制度です。例えば、ワクチンや農薬等の薬の発明、エンジンや工作機械等の機械の発明、物(薬や機械等の物)の作り方の発明等を特許では保護します。

これに対して、意匠は、物品の外観デザインを保護する制度です。例えば、コップの外観・形状、車の外観・形状、建物の外観・形状、建物の内装デザイン等を意匠では保護します。技術的な機能が無くても、外観デザインが新しいものであれば、意匠権を取得できる場合があります。

特許?それとも意匠?

例えば、あなたが新しい機能を備え、デザイン的にも新しいゴミ箱を開発したとします。

その新しい機能は、技術的なアイデア(発明)ですので、その技術的なアイデアについて特許出願をして特許権を取得することができれば、その機能を備えたゴミ箱を保護することができます。

一方、ゴミ箱のデザインは新しいことから、そのデザインについて意匠登録出願をして意匠権を取得することができれば、ゴミ箱のデザインを保護することができます。

特許のメリット

上のゴミ箱の例の場合、特許では、新しい機能について特許権を取得することになりますので、その新しい機能を備えたゴミ箱は、ゴミ箱の外観・形状に関わらず、権利範囲に含まれます。すなわち、他社が、デザインは違うものの同じ機能を備えたゴミ箱を製造販売した場合、特許権の侵害することになります。

これに対して、意匠の場合、そのデザインについて意匠権を取得することになりますので、外観・形状が類似しているものについては権利範囲に含まれますが、同じ機能を持っていても外観・形状が大きく異なれば権利範囲から外れてしまいます。ですので、他社が、同じ機能を備えたゴミ箱を製造販売したとしても、デザインが大きく異なっていた場合には、その意匠権の侵害とはならないことになります。

このように、意匠の場合は物品の外観形状に縛られてしまうため、特許と比較して権利範囲が狭いというデメリットがあります。

あれ?、なんだか、意匠より特許のほうがいいじゃない?ってなりませんか?

意匠のメリット

でも、特許にもデメリットはありますし、意匠にもメリットもあります。

例えば、特許の場合、技術的に新しいものでなければ特許権の取得はできませんですが、意匠の場合には、技術的に新しいものでなくても、デザインが新しいものであれば意匠権を取得できる可能性があるため、意匠のほうが権利を取得しやすい傾向があります。

また、特許の場合、特許出願の日から3年以内に審査請求をしなければ審査されませんが、意匠の場合は、出願をすれば審査請求をしなくても全件審査されますし審査に要する期間も短いことから、意匠のほうが早期に権利を取得しやすい傾向があります。さらに、特許に比べて意匠の方が権利取得までの費用が安く済みます。

権利の存続期間についても、特許は特許出願の日から20年ですが、意匠は意匠登録出願の日から25年ですので、特許よりも長く権利を維持することができます。


特許よりも意匠がおすすめのケース

上述したように、特許にも意匠にも、メリット/デメリットがあるのですが、以下のような場合は、意匠で権利取得を目指したほうがよいかもしれません。

機能にも形状にも特徴があって、その機能を発揮するためにはその形状以外考えられられない場合、その形状について意匠権が取得できると、 とても強い権利となります。つまり、意匠で物品の外観形状を保護することで、結果的にその機能までも保護できるのです。

特許でも意匠でも出願

なお、費用は掛かってしまいますが、例えば、開発した製品が「形状に特徴のある技術的なアイデア」であった場合、特許と意匠の両方を出願しておくと、権利取得の可能性や製品保護の観点から安心かもしれないですね。

特許なのか意匠なのか迷ったときは、弊所にご相談ください!