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2022.05.27

マドプロ出願について

外国への商標出願に詳しい方であれば、「マドプロ出願」という言葉を聞いたことをあるかもしれません。「マドプロ出願」というのは実は略称で、正式名称は「マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願」です。マドプロ出願を極めて簡単に説明するならば、「WIPO(世界知的所有権機関)に対する1つの出願によって、複数の国で商標が保護される外国商標出願方法」です。

マドプロ出願の概要

マドプロ出願の大まかな流れは以下のようになります。

(1)特定の国(例えば日本)での商標登録や商標出願に基づいてマドプロ出願をし、保護を求める国を指定する。
(2)WIPOによる形式的な審査が終わると「国際登録」として登録される。
(3)国際登録の内容に基づき各指定国で審査が行われ、問題がなければそれぞれの国で商標が保護される。

ここで大切なのは(3)です。マドプロ出願では1つの出願で複数国に出願したのと同様の効果を得られますが、すべての指定国での保護が保証されているわけではありません。審査は各国が独自に行いますので、国によって保護の可否や保護範囲が異なる場合があります

マドプロ出願のメリット

手間と費用の削減

通常であれば、商標の保護を望む国ごとに出願手続をしなければならないところ、マドプロ出願では複数国を指定しても出願手続は1回で済みます。また、各国に直接出願する場合には必ずその国の代理人(現地代理人)を通す必要がありますが、マドプロ出願の場合は基本的には現地代理人は不要です。つまり、マドプロ出願では一般的に、かかる手間も費用も削減することができます。

管理が容易

国際登録の存続期間は国際登録日(マドプロ出願が国際登録になった日)から10年で、何度でも更新可能です。更新手続は国際登録単位で行いますので、複数国で保護されていても、更新手続は1回のみです。各国に直接出願した場合、国ごとにバラバラの更新期限を管理する必要がありますが、マドプロ出願ではそのような煩雑さがありません。

マドプロ出願の注意点

すべての国で利用できるわけではない

残念ながら、マドプロ出願は世界中すべての国で認められているわけではなく、マドリッド協定議定書の締約国(2021年5月現在:128ヶ国)に限られています(締約国一覧は特許庁ホームページをご覧ください)。もしも締約国以外の国で保護を求める場合には、その国に直接出願せざるを得ません。

基礎となる商標登録又は商標出願が必要

マドプロ出願をするには、必ずマドプロ締約国(通常は自国)での商標登録(基礎登録)又は商標出願(基礎出願)が必要です。また、マドプロ出願はこの基礎登録(出願)の内容を踏襲します。したがって、自国で商標出願をせず、外国でだけの保護を望む場合や、自国の登録や出願はあるけれども、外国では違う商品や役務を指定したい場合には不向きです。

セントラルアタックの可能性

「セントラルアタック」なんてちょっとかっこいい響きですが(笑)、実は恐ろしいものです。前項の通り、マドプロ出願は基礎登録(出願)に従属しているため、基礎登録又は基礎出願が5年以内に取消や却下になった場合には、それに伴い国際登録及び指定国での保護も自動的に消滅してしまいます(そうなった場合の救済策もありますが、ここでは割愛します)。つまり、基礎登録や基礎出願が5年以内になくなってしまうと、せっかくマドプロ出願をして保護された他の国の権利もなくなってしまうのです。ですので、最低5年間は、基礎登録(出願)を確実に維持する必要があります。