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2022.03.10

内装の意匠

近年、モノのデザインだけでなく、店舗などの内装のデザインに特徴を出して、企業のブランド価値を創出しようという試みが近年増えてきました。

しかし、以前の意匠法では、一つの物品について一つの意匠が成立するという考えがあるため、原則、家具、什器(じゅうき)や壁などの複数の物品から構成される内装の意匠は、意匠登録が認められず、意匠法上の保護が得られていませんでした。

そこで、このような内装のデザイン(意匠)を保護しよういうニーズが高まり、令和元年の意匠法改正で、店舗、事務所その他の施設の内装が意匠として登録を受けることができるようになりました。

内装の意匠として登録を受けるための要件

内装の意匠として登録を受けるためには、一般的な意匠登録出願で課せられる新規性や創作非容易性などのほか、(1)店舗、事務所その他の施設の内部であること、(2)複数の意匠法上の物品、建築物又は画像により構成されるものであること、(3)内装全体として統一的な美感を起こさせるものであることが必要になります。

(1) 店舗、事務所その他の施設の内部であること

種々の施設の「内部」に該当することが必要となります。

店舗、事務所以外のその他の施設としては、例えば、宿泊施設、医療施設、教育施設、興行場、住宅などが挙げられます。

(2)複数の意匠法上の物品、建築物又は画像により構成されるものであること

すなわち、複数の物品で構成されていて、その構成物品が意匠法上の物品、建築物又は画像であることが必要となります。

  • 内装の意匠を構成するものとして適切なものの例

机、椅子、ベッドなどの家具類、陳列棚などの什器類、フロアスタンド、電気スタンド、内装の意匠を構成する建築物に備え付けられたモニターに表示される画像、備え付けられたプロジェクターから当該建築物の壁面に投影される画像など

  • 内装の意匠を構成するものとして不適切なものの例

例えば、人間や犬等の動物植物、煙などの不定形物などは、原則として、内装の意匠を構成する物品として認められません

(3) 内装全体として 統一的な美観を起こさせるものであること

「統一的な美感」が認められる例としては、例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 家具や什器、壁や床等に共通の材質や模様等を用いている場合
  • 壁や床等の装飾、家具や什器を共通するコンセプトに基づいて構成している場合

共通の材質や模様はわかると思いますが、共通するコンセプトってなんだかわかりにくいですよね。
共通するコンセプトには、例えば、本棚、テーブルや椅子が規則的に並んでいること、構成物等に観念上の共通性があることなどが該当します。

内装の意匠の登録例

内装の意匠として意匠登録されている例を紹介します。

以下の2つは、国内で初めて意匠登録された内装の意匠で、さらに、共通するコンセプトに基づいて構成していることで意匠登録された例です。

意匠登録第1671152号「書店の内装」(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(蔦屋書店))

意匠登録第1671153号「回転寿司店の内装」(くら寿司株式会社)