代表メッセージ

ひので総合特許事務所
代表メッセージ

元研究者だからこそ思うこと

私はもともと、研究畑の人間です。大学では化学専攻でしたので、白衣を着てフラスコを振って実験しているような典型的な研究者でした。メーカーに就職してからも、20代の頃は、それこそ夢中で実験に明け暮れたものです。本当に実験が大好きだったのです。

しかし5年もすると、実験は徐々に私の手を離れていきました。上司から、実験は部下に任せて、研究のネタ探しや予算取りといった管理業務をこなすよう求められたからです。大好きな実験ができなくなり、それでいて管理業務に面白みを感じなかった私は、転職を考えるようになりました。ただ、研究職に転職しても、同じことの繰り返しになる気がしました。

そこで考えたのが、特許事務所への転職です。当時の職場では、特許申請のノルマが課されていましたので、特許の申請書類を20件ほど書いた経験がありました。当初はそれほど強い思い入れはなかったのですが、妻と子供を養うために、その経験を生かせる特許事務所への転職を決め、弁理士を目指すことにしました。

その後、弁理士の仕事が自分にとっての天職だと気づくのに、あまり時間はかかりませんでした。

私は、研究・開発の現場にある独特の空気感、喜びや苦しみ、単純な言葉では言い表せない感情のうねりを、身をもって知っています。突き当たった課題を解決するために持てる限りの知恵と知識を絞り、何回、何十回と試行錯誤して、ようやくアイディアが形になった時の何物にも代えがたい達成感。成果物を世に出す時に感じる期待と不安。

相談に来る方からは、そうした背景が持つ気迫のようなものを感じました。

日本の企業、特に中小企業は、まだまだ知的財産権を活かしきれていません。革新的なものづくりをかつての同志としてサポートしながら、この課題を解決することに、大きなやりがいを見出したわけです。


革新のお手伝いができる喜び

私は、まず「相談に来られた方を信頼する」ことを心掛けています。

弁理士に限らずサービス業をされている方であれば、「相談に来られた方に信頼される」ように心掛けるのが一般的だと思います。それはそうなのですが、知的財産権に絡む書類を作成するには、その技術の核となる情報を最初から共有してもらう必要があります。

発明にかかった努力を思えば、お客様からの信頼を得るよりも前に、こちらがまず信頼して、持てる知識や情報をお伝えすることが道理だと考えています。その上で、申請の要否やご依頼の是非を判断いただければ、フェアに話を進めることができるでしょう。

また、知的財産に関する申請書類は、ただ記入欄を埋めればいいというものではありません。たとえば特許申請の場合は、製品の核となる技術にフォーカスすることが重要です。モノではなく発明を抽象的に捉え、その技術の使われ方を先回りして考える、ということです。

この詰めが足りないと、形を少し変えただけの模造品が許されてしまう可能性があります。発明を権利化するためには、技術と法律、双方に関する専門知識が不可欠です。

弁理士の仕事は、技術と法律を橋渡しすることです。発明を権利化するために、周辺知識について学習し、展開方法を依頼主と二人三脚で考え、権利者が正当な利益を受け取れるように努めます。

私は、研究・開発を「トンネルを掘る」作業だと捉えています。先頭を切って未知の領域を切り拓き、最先端の技術を創り上げているのです。

一方、弁理士は、トンネルを掘っている後ろで「掘った土を運ぶ」お手伝いをする立場だと思っています。研究・開発により創り上げられた最先端の技術に、一歩下がった位置で触れることができ、さらには他のトンネルの技術にも触れることができるのです。研究職とは違いますが、知的好奇心が大いに刺激されます。

だからこそ、技術者、研究者に敬意を持って、技術革新をお手伝いできるものと自負しています。


フェアにものづくりができる環境を

「知的創造サイクル」という言葉があります。

知的財産の創出、権利化、活用という3つのステップから構成されるサイクルで、特許で言えば、発明者の利益を保護し、さらなる発明を促すための枠組みとして提唱されているものです。発明した技術を権利化し、それを活用することで利益を得て、さらなる発明に繋げるわけです。

ただ、知的財産を権利化する重要性は時を追うごとに高まっているものの、本業に軸足を置いているとそこまで手が回らないケースも少なくありません。必要な手続きはもちろん、かかる費用や期間、見込める利益についても不透明な部分が多く、本業をこなしながら必要な知識を得て正しい判断を下すのは、難しいものがあります。

知識の有無によって、知的財産の恩恵を受けられている企業とそうでない企業がいるのは、残念ながら事実です。弊所では、そうした齟齬を可能な限り小さくし、企業間のフェアなものづくりを支援しています。

何をしたら良いか分からない、そもそも知的財産に手を付ける必要があるか判断できない、という方は、お気軽にご相談ください。

ひので総合特許事務所 代表弁理士

赤塚 正樹